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雨衣ひとすじ久保製作所

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朝ごはんに「茶がゆ」はいかが? 

皆さまこんにちは。ここ紀美野町から見える山並みに、薄いピンクの山桜がきれいに見られるようになりました。近所の桜もほぼ満開でとても綺麗です。

最近は、この春から出航する船に積込む水産合羽製造の追い込みで社員一同頑張っています。

こんな時こそしっかり朝食をとりたいものです。取引先との電話で朝食に茶がゆを食べたと話したところ「朝ご飯に茶がゆ?」と驚かれました。

当たり前の習慣なのでうっかりしていましたが、和歌山県内の各地、高野山に続く街道沿いの町として発展してきたここ紀美野町では昔から茶がゆを食べる習慣があります。昔から地元で取れたお米と地元のお水で炊くと美味しい茶がゆができると言われています。

私も子供の頃から毎朝茶がゆを食べて育ちました。普通にその話をしてしまったところ驚かれたというわけです。

和歌山の茶がゆ

和歌山の茶がゆは、お米をほうじ茶または番茶で炊き上げたおかゆで、この辺りでは「おかいさん」と呼ばれています。どろっとしている一般的なおかゆと違い、水分の割合が多くさらっとしているのが特長です。

画像:農林水産省 うちの郷土料理 おかいさん/茶がゆ 和歌山県

なぜ茶がゆ?

ご存知のとおり和歌山県は「紀の国」と呼ばれていますが、「木の国」が転じたものとも言われているように森林が多いところです。調べたところ、県の面積の4分の3を森林で占められ、森林の割合面積はランキング第6位でした。ちなみに10位までをご紹介。

順位都道府県名総土地面積/ha森林面積/ha森林の割合
第1位高 知710,391591,80983.3%
第2位岐 阜1,062,129838,91279.0%
第3位山 梨446,499347,23377.8%
第4位島 根670,823519,87477.5%
第5位奈 良369,094283,46876.8%
第6位和歌山472,468360,93176.4%
第7位宮 崎773,531586,52575.8%
第8位長 野1,356,1561,023,36075.5%
第9位徳 島414,693312,01075.2%
第10位岩 手1,527,5011,144,01674.9%

「農林業センサス 2015年農林業センサス 第7巻 農山村地域調査報告書 第1部 農山村地域調査 1-1 1 総土地面積及び林野面積」数値を元に表作成

このように和歌山は森林が多く耕地が少なかったため、昔からお米は大変貴重でした。そのため少ないお米でも満腹になれるようにと、茶がゆが生み出されたと言われています。江戸時代、五十五万五千石を誇った紀州藩による厳しい米の取り立てに対する庶民の工夫との見方もあるようです。

では、なぜ茶がゆが愛され続けているのか。その歴史を調査した和歌山信愛女子短期大学の堺みどり教授は「江戸時代、紀州藩による厳しい米の取り立てに対する庶民の工夫」と見ます。

紀州藩は山林が8割を占め、耕地が少ないにもかかわらず、農民は多くの米を納め、貧しい生活を強いられていました。「一時的でも空腹を満たすため、水分を多く含んだかゆにして食べた。たくさん食べられるよう、茶を入れ、その香りに頼った。
(ニュース和歌山 2019年6月22日更新 「和歌山謎解き代行社 茶がゆを食べる人 今も多い?」記事より一部抜粋)

農林水産省のWebサイトうちの郷土料理に和歌山の茶がゆについて上手な説明が掲載されていましたのでご紹介しますね。


歴史・由来・関連行事
和歌山県では、「茶がゆ」のことを親しみを込めて「おかいさん」または「おかゆさん」と呼ぶ。「木の国」ともいわれる山の多い同県では米が貴重だったため、少ない米でも満腹になるように生み出された。とくに、稲作に適した平地の少ない県南部地域では日々の主食で、1日に5回、6回と食べていた。かつては茶の木は家庭でも栽培されており、茶がゆ文化の定着を支えてきた。印南地方の里唄には「今日も今日とて、おかいでけんか、わしのおかいに芋がない」とあり、兄弟で取り合いになるほど甘い芋入りの茶がゆが好まれていたことが分かる。”

食習の機会や時季
熊野山間をはじめ、稲作地が少ない地域では米飯を農作業後ののどの乾きと空腹に、さらりとした口あたりの「おかいさん」は最適である。忙しい時期には大釜で大量に炊いておく。「おかいさん」は食べてもすぐに腹が空くので、中にさつまいもや里芋を入れて腹の足しにしていた。

飲食方法
鍋に分量の湯を沸かし茶袋に番茶を入れ、色よく煮出す。茶袋をとりだし、洗った米を入れて強火で炊く。木のしゃもじですくいあげるようにして混ぜる。米がふくらんだところで火を止める。※好みで塩(ひとつまみ)を入れる。地域や家庭ごとにお茶や茶がゆの炊き方に違いがあり、何も入れないものを「坊主茶がゆ」という。県北部地域や中部地域ではそら豆やうすいえんどうを入れた「豆茶がゆ」を、県南部地域では秋の山芋の茎にできるむかごをいれた「むかごがゆ」をつくることがある。このほか、南高梅の梅干しや金山寺味噌をのせたものや、焼いた餅を入れる「焼きもちかゆ」、米粉や小麦粉、きび粉を練ったものを入れる「だんごがゆ」などもあり、食べ方のバリエーションが豊かである。
出典:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 おかいさん/茶がゆ 和歌山県

我が家の茶がゆ

ちなみに我が家の茶がゆはこんな感じです。



我が家では茶がゆ専用の番茶(粉茶)を近所のお米屋さんでまとめて購入しています。

まず鍋に水を入れて粉茶(パック)を煮出します。お茶の香ばしい香りが漂ってきたら粉茶(パック)を取りだし、お米を入れて10分程度炊きます。粗い泡から細かい泡になってきたらできあがりと祖母から教わりました。

我が家では梅干しや海苔のつくだにと一緒に頂くことが多いです。夏は古漬けのなすびやきゅうりを刻み、暫く水出した後絞ります。これをなすびの洗濯と呼んでいます。

洗濯後、薬味の擦った生姜を混ぜ、お醬油を少しかけて食べるととても美味しいです。我が家では薬味は生姜でしたが、紅生姜のお家もあるようです。

これまでの人生で一番美味しかった茶がゆは、和歌山県熊野エリアの温泉郷「龍神温泉」のとある民宿で頂いた茶がゆです。お水が違うのか?あまりの美味しさに感動しました。ちなみに龍神温泉は、島根県の「湯の川温泉」、群馬県の「川中温泉」と並んで日本三美人の湯として知られています。

 

写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟

茶がゆのいいとこ

茶がゆのいいところは、香ばしい香り。さらさらっと喉を通りやすく、水分をたくさんとれることでしょうか。朝起きると水分を摂らないといけませんが、茶がゆを食べることで水分も同時に摂れます。我が家では茶がゆの時はお茶は飲んでいません。

高齢になると水分を摂る量が少なくなるなるため、意識して水分の補給が必要だと言われています。また、水分は飲み物からだけではなく食事からも摂っているため、食事を抜くと水分不足になると聞いたことがあります。お米も水分も一緒に取れる茶がゆはとてもいいと思います。

水分も摂れる茶がゆですが、腹持ちはあまりよくありません。我が家では秋冬サツマイモをたくさん頂いた時等は茶がゆに入れて炊くこともあります。

ちなみに、紀美野町周辺に在住の方全員が毎朝茶がゆしか食べないというわけではありません。我が家のように高齢者がいる世帯では昔から続いている食習慣ですが、もちろん普通にパンやおにぎりを食べるお家もあります。

ちょうど社内にいるメンバーに、普段茶がゆを食べているかどうか聞いてみました。やはり毎日食べてるのは高齢者のいる世帯で、たまに食べるを含めると約4割でした。

・ほぼ毎日茶がゆを食べる 3名(うち朝がゆは2名)
・たまに食べる     8名
・年に数回食べる 1名
・家族が食べる  1名
・全く食べない   14名

今どきは朝ご飯を食べないという方もいるかもしれませんね。こちらも社内にいる同じメンバーに聞いてみたところ、ほぼ全員が朝ご飯を食べていてほとんどがパン食でした。パン21名、茶がゆ・ご飯5名。食べない1名。全国的にはどうなっているのでしょうか。そのあたり気になったので調べてみました。

みんな朝ご飯に何食べてるの?

まずは働き盛り世代から。一人暮らしをしている30代女性を対象に「働く女性の食生活と朝食の選び方」についての最近の調査※1によると、毎日食べているのは約半数

よく食べているものは5割強がパンとスープ等の洋食、4割が白米と味噌汁等の和食、3割弱がシリアル(オートミール、コーンフレーク等)、2割弱がフルーツ、でした。ぞうすいやおかゆはたった5%。



毎日食べているのは全体の約半数という結果は、働き盛りでは無理もないことと思います。むしろ、ご飯と味噌汁等の和食を食べている人が4割もいたことが意外で嬉しくなりました。

親しい東京の友人もその年頃、帰りは午前零時をまわる過酷な毎日を送っていました。終電も午前1時頃まであり、そんな時間でも同じような会社帰りのサラリーマンでいつもいっぱい。

最寄り駅近のコンビニに寄るとサンドイッチやおにぎりはなくなって棚は空だったそうです。カップ麺や冷凍食品を買って帰って遅い夕飯、疲れ果ててバタンキュー。

朝はギリギリまで寝て起きると超特急でメイクをして服を選んで、家に何か食べ物がある時はそれを食べながら髪をブローして飛び出して行ってたと言っていましたから。いつ倒れるか?というようなサバイバル生活では朝食どころではなかったでしょう。

次に幅広い世代を調べて見ました。20~69歳の男女1,000人による「朝ごはんに関する調査」※2によると、朝ご飯を「毎日食べる」人は全体の約6割。20代男性では「全く食べない」が約2割弱。

最もよく食べられているのは「パン類(サンドイッチ、菓子パン、総菜パン、ホットケーキ、ベーグルなど)」が約4割でトップ。次いで「米類(白米、玄米、おにぎり、餅など)」約3割強、「ヨーグルト」が約1割でした。

手軽なパンが食べられているのはわかります。ここ紀美野町でもこだわりパン屋さんがたくさんできていますし、コンビニもコンビニと侮れないほど様々な本格惣菜パンを出しています。昔と違ってお値段は高くなりましたね。100円で買えるパンを見かけなくなって随分経つように思います。

パンとコーヒー

パンが好まれている理由のひとつに、本格コーヒーを飲む機会が増えたというのもあるのではないでしょうか。


今はコーヒー専門店に限らず、コンビニ、マクドナルド等のファーストフード店でも本格コーヒーが飲めるようになりました。

どこも本格コーヒーに力を入れているように思います。コンビニに立ち寄るとコーヒーの本格的ないい香りに誘われてつい買ってしまったという方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

先程の調査でも、朝ご飯と一緒によく飲んでいるものを聞いたところ、「コーヒー(カフェオレ、カプチーノ等含む)」が約4割でトップ。次いで「お茶類(紅茶を除く)」3割弱、「水」が2割でした。目覚めにはコーヒーの香りが必要なのかもしれませんね。

この調査で普段朝ごはんを「自宅で調理・準備をする」と回答した人に、2022年の食料品値上がり以降以前と比較して普段の朝ごはんにかける金額に変化があったかを尋ねる質問がありました。結果は「変わらない」が74.5%でトップ。次いで「増えた」(18.7%)となり、「減った」は3.3%でした。

忙しい朝、お気に入りの食べ物で手軽に済ませたいという朝ご飯スタイルは変わらないということでしょうか。

香ばしい茶がゆの香りに癒やされます

コーヒーの香りもいいですが、茶がゆもコーヒーに負けずおとらず、炊くと部屋にほうじ茶の香ばしい香りが漂い、なんとも言えず癒やされます。調べて見ると、ほうじ茶の香ばしい香りは「ピラジン」とい香り成分が関係しているそうです。

茶葉を焙煎して作るほうじ茶は、お茶に含まれているアミノ酸と糖が焙煎時に加熱されることで「ピラジン」が生成され、ほうじ茶ならではの香ばしいかおりになるとのこと。それだけではなく、研究によると脳をリラックスさせる働きや、血流の流れを良くする血行促進の働きもあるそうです。

実はこの「ピラジン」はコーヒーにも入っているそうですよ。ほうじ茶はすっきりとした優しい香ばしさ。コーヒーは力強い香ばしさ。タイプは違いますが、どちらも香ばしい香りが私たちに元気をくれますね。

皆さんも是非一度、香ばしくて、さらさらと喉ごしがよく、水分補給のできる茶がゆをお試し下さいね。和歌山の金山寺味噌や南高梅を是非ご一緒に!

 

参考:
「農林業センサス 2015年農林業センサス 第7巻 農山村地域調査報告書 第1部 農山村地域調査 1-1 1 総土地面積及び林野 面積」数値を元に表作成
・和歌山県ホームページ 和歌山県の林業 和歌山県は、森林が多い県なの?
・ニュース和歌山 2019年6月22日更新 「和歌山謎解き代行社 茶がゆを食べる人 今も多い?」記事より一部抜粋
※1「働く女性の食生活と朝食の選び方」についての最近の調査」『LACOOK MARCHE(ラコックマルシェ)』運営 株式会社オモヤ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000073890.html

※2「朝ごはんに関する調査」楽天インサイト株式会社 2022年9月27日(火)と9月28日(水)の2日間、楽天インサイトに登録しているモニター(約220万人)の中から、全国の20~69歳の男女1,000人を対象にインターネット調査
・ほうじ茶の香り成分【ピラジン】リラックス効果のある香ばしいかおり/
お茶と毎日を楽しく「CHAKATSU」 
https://chakatsu.com/basic/hojicha_pyrazine/
使用画像:
・農林水産省 うちの郷土料理 おかいさん/茶がゆ 和歌山県 wakayama_1_2.jpgを加工
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/okaisan_wakayama.html
・「龍神温泉 元湯」を加工。写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟
 

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