皆さま、こんにちは。段々と気温が上がって蒸し暑くなってきました。先日も初夏のような陽気に見舞われ、そうめんが食べたくなりました。
そうめんと言えば、最近はもっぱら市販のめんつゆの我が家ですが、昔は叔父が作った「干し鮎(あゆ)」で出汁を取っていました。
叔父が釣ってきたのか、釣ってきた人に頂いたのかわかりませんが、たくさんの鮎を串に刺して焼いた後、筒状に束ねた藁に串ごと刺し、干していました。
紀美野町には、高野山西麓を水源とする紀の川水系最大の支流「貴志川」と、貴志川の支流「真国川」が流れています。2つの川では昔から鮎やあまごが獲れます。
5月末現在あまご釣りは解禁され、鮎釣りは6月解禁となっており、秋頃まで楽しむことができます。県内外の川へ鮎釣りに行く“釣りキチ”の従兄弟に、「鮎釣り」について聞いてみました。
鮎(あゆ)はエサで釣れない
一般的に釣りはミミズ等のエサやルアーで釣りますが、鮎はエサで釣れない特殊な魚。というのも、鮎のエサは川底の石につくコケ。そこで、鮎釣りには本物の鮎をおとりに使う、「友釣り」という方法がとられているとのことです。
鮎は自分のなわばり(エサ場)に浸入してきた他の鮎を攻撃するそうです。この習性を利用したのが「友釣り」です。
まず、釣りたい川を管轄する漁協で遊漁券を購入します。従兄弟の場合、よく行く川は年間の遊漁券(年券)を、それ以外の川では1日券(日券)を購入しているそうです。年券を持っていると、各漁協の定めた期間内に何度でも鮎釣りを楽しむことができます。
次におとりの鮎を釣りたい川を管轄する漁協、釣具店、オトリ屋さん等で購入します。おとりの鮎を売っているからオトリ屋さんなんですね。
鮎(あゆ)の友釣り
おとりの鮎の鼻の穴に金属の環「鼻環(はなかん)」を通します。鼻カンに「鼻カン周り」という針のついた仕掛けを繋げ、おとりの鮎を泳がせます。
そして、おとりの鮎に攻撃してくる鮎を、9メートルほどの長さの釣りざおをあやつりながら針にかけて釣ります。釣った鮎は次のおとりとして使うのだそうです。
鮎(あゆ)釣りグッズ
鮎釣りに必要な道具をまとめました。
おとり缶 | 鮎を購入して運ぶ時や釣った鮎を活かして運ぶ時に使用する |
引き船 | 釣った鮎を入れておくもの |
鮎タイツ | ウエットとドライがありシーズンによって使い分ける |
鮎タビ | フェルト底で川の中の苔の付いた石でも滑りにくい |
帽子 | 熱中症予防や安全対策 |
偏光グラス | 水面の乱反射をおさえて川の中が見やすい |
ベスト | 釣り道具一式を入れておく |
鮎ベルト | 引き舟のロープを付けたり、タモをさしたりする |
鮎タモ | 釣った鮎を受ける時に使用する(カヤの木の枝を使い枠を円形に曲げて接続し柄には鹿角。 漆を塗り重ねて作った従兄弟の手製) |
よく釣り人の近くに浮かんでいる小さなボートみたいなものは「引き船」と言って、釣った鮎を入れておくものだったんですね。ちなみに1匹目が釣れたら、最初おとりにした鮎は引き船に入れるそうです。
鮎(あゆ)釣り こんな時は?
鮎釣りについて段々わかってくると、新たに疑問がでてきました。そこで和歌山県内水面漁業協同組合連合会さんに電話して聞いてみました。
Q:遊漁券の必要ない魚(例:ヌマムツ・カワムツ・オイカワ等)は自由に獲ってもいいの?
-基本遊漁券を購入しなくてよい魚は自由に釣ってよいことになっていますが、事前に釣りたい川を管轄する漁協さんに確認して下さい。
Q:鮎の遊漁券(日券)を買って釣りをしたところ、アマゴが釣れた。どうすればいいの?
-川へリリースして下さい。
Q:鮎ルアー(疑似餌)釣りはできるの?
-鮎釣りは基本「友釣り」ですが、川によっては一部区間限定で可能な場所もあります。釣りたい川の管轄漁協に確認して下さい。
例:※アユルアー:貴志川(紀の川市貴志川町国主の諸井堰から真国川との合流点上流端まで)(禁漁区を除く)、真国川全域(禁漁区を除く)
小魚等エサを食べるような魚はルアーでよく釣れますが、エサがコケの鮎のルアー釣りはなかなか難しいです。ちなみにあまごはルアーでよく釣れます。
Q:鮎のお刺身は食べれるの?
-天然の鮎のような淡水魚には寄生虫がいることがあり、基本生食はしません。釣った鮎を焼いて食べる場合も、生焼けでないかしっかり確認しましょう。
なるほど、とてもよくわかりました。福地さん、この度は突然の問合せにもかかわらず、いろいろとわかりやすく教えて下さり、ありがとうございました!
和歌山県内水面漁業協同組合連合会では、和歌山県内の河川の釣果情報やふれあい投稿で情報共有ができる等、ホームページで様々な取り組みを行なっています。
今年は既に申込でいっぱいだそうですが、初心者向けの無料の講習もあります。希望すればガイドさんもいます。鮎釣り道具も無料レンタルしているとのことです。
鮎釣りやあまご釣りに興味のある方は問合せしてみて下さいね。
鮎の国わかやま「入れ掛かり」総合案内所(和歌山県内水面漁業協同組合連合会)
干し鮎(あゆ)
さて、和歌山県ふるさとアーカイブによると、県内の日高川町(船津)、田辺市(龍神小家)、すさみ町(佐本)エリアでは、干した鮎でお雑煮の出汁をとっていたそうです。
調べたところ、昔から鮎を干し、だしをとって夏にそうめんにして食べ、お正月には干し鮎から出汁をとった雑煮を食べる文化は県外にもありました。
川の幸に恵まれた土地柄、内陸部等では川魚は貴重なたんぱく源として重宝され、あゆが獲れる時期に干し鮎などを作って保存していたと思われます。
呼び方も、干し鮎・焼き鮎・焼き干し鮎・あぶり鮎・一夜干し等いろんな呼び方がありました。
紀美野町周辺では干し鮎の取り扱いが見当たらず・・・。スタッフが隣の有田川町、熊野地方への玄関口にある道の駅「しらまの里」に問合せたところ、干し鮎を販売していることがわかりました。
早速、あぶり鮎(500円/1袋2匹入り)を2袋購入。袋の表示を見ると、天然のあゆで日高川産でした。
ちなみに日高川は清流として知られていますが、長さが115キロメートルもある、日本一長い二級河川だそうです。
料理好きのスタッフが、あぶり鮎を使って自宅でそうめんの出汁をとってみました。出汁の取り方はいりこと同じ要領。
さて、そうめん出汁の感想です。川魚特有の臭みがあるものの、味はコクがあって美味しかったそうです。
スタッフの家族は臭いが気になって、生姜をたっぷり入れ、何とか食べられたとのことです。出汁がなかなかでないため、若干火にかけすぎたのかもしれないと言っていました。
出汁をとった後の鮎の身は小骨を取り、醬油・砂糖・生姜で味付けしてご飯に混ぜて食べたそうです。
養殖鮎(あゆ)の生産量 全国第3位
紀の川から熊野川まで豊かな清流に恵まれた和歌山。放流された鮎・天然の鮎やあまごがとれるだけでなく、鮎の養殖もさかんです。
紀の川・有田川・日高川・富田川地区で、ブランド鮎など、それぞれこだわりの鮎が育てられています。養殖の鮎の生産量はかつては全国第一位を保っていましたが、現在は第3位となっています。
全国 3683t
第1位 愛知県 1057t
第2位 岐阜県 861t
第3位 和歌山県 591t
第4位 栃木県 299t
第5位 滋賀県 259t
郷土料理 鮎(あゆ)寿司とじゃこ寿司
紀の川市の粉河寺近くにある寿司店「力寿し」さんの名物「鮎寿し」を買ってきました。力寿しさんでは、紀の川市流域で養殖された鮎を、一昼夜かけてふっくらと炊きあげているそうです。
甘辛くしっかりした味付けですが、上品です。小骨を処理しているのでしょうか。柔らかくて美味しかったです。
鮎寿司に続いて、紀の川市桃山町にある「じゅげむさん」の「じゃこ寿司」を買ってきました。紀の川では鮎の他、小魚のじゃこ(川魚「オイカワ」)も豊富に獲れたことから、昔から親しまれている郷土料理です。
母方の出身の貴志川町辺りでは、お祭りの時には鍋に竹の皮を敷いて、貴志川で獲れたじゃこを甘辛く煮て、にぎり寿司や押し寿司にして食べたそうです。
その影響で、私も子供の頃からじゃこ寿司を食べています。じゃこ寿司は、じゃこを素焼きにして干し、甘辛く煮付けたじゃこをお寿司にしたものです。
小魚なので骨は感じますが、力強い味で、あんなに小さな魚を開きにしているのにはいつも感心します。
今回は鮎釣り・干し鮎・養殖鮎・鮎寿司とじゃこ寿司と、和歌山の鮎について追いかけてみました。
川の恵みと、川の恵みを大切にしながら伝統の食文化を守っている人々に、心から感謝です。
(参考)
・鮎の国わかやま「入れ掛かり」総合案内所(和歌山県内水面漁業協同組合連合会)
https://naisuimen.com/
・和歌山県ふるさとアーカイブ
https://wave.pref.wakayama.lg.jp/bunka-archive/syokubunka/index.html
・政府統計の総合窓口 令和4年漁業・養殖業生産統計 調査2022年内水面養殖業収獲量(全国・都道府県別)魚種別収獲量 あゆ
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500216&tstat=000001015174&cycle=7&year=20220&month=0&tclass1=000001015175&tclass2=000001214760&tclass3val=0
・有田川町 (道の駅)しらまの里
https://www.town.aridagawa.lg.jp/top/index.html
・紀の川観光協会 力寿し
https://www.kanko-kinokawa.jp/marchais/3036/