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雨衣ひとすじ久保製作所

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日本人のこころの風景 棚田

皆さま、こんにちは。田植えの季節ですね。田植えと言えばここ数年、“SNS映え”する等で、美しい棚田の風景が注目されています。皆さんは実際に棚田をご覧になったことがありますでしょうか。

“SNS映え”がきっかけ?!注目される棚田

ご存知のとおり、棚田は山の斜面や谷間の傾斜地に階段状に造られた田んぼのこと。小さな田が多く、数えれば千枚にもなるという意味で「千枚田」とも呼ばれています。その四季折々の美しい風景はどこか懐かしく、日本人のこころの風景と言えると思います。

調べてみると、棚田は弥生時代と飛鳥時代の間の古墳時代(3世紀から7世紀頃)からあったそうです。

近年耕作放棄加速問題として知られていた棚田。平地の水田に比べると大型の機械を入れられない等「労力2倍、収量半分」と言われ、経営は厳しいとされ、今や日本の棚田は、全盛期の約4割が失われたと言われているようです。

そんな中、棚田の耕作放棄問題への新たな取り組みが全国各地で始まっています。その一つが棚田のオーナー制度

例えば「日本の棚田百選」に認定され、都心から最も近い棚田として有名な千葉県鴨川市にある棚田「大山千枚田」の場合、375枚を越えるの田んぼのうち162枚が棚田オーナーらによって耕作されているそうです。保存会は棚田保全活動の他に、学校の農業体験受け入れ、農家レストランの運営と棚田米ブランド化、自然体験活動等、積極的に活動運営しています。

全国各地で棚田を守る取り組みが活発になったのも、SNSやブログで美しい棚田の風景が広まり、それがメディアに注目されたり、大山千枚田等の活動が取り上げられたのがきっかけになったのかもしれませんね。

600年以上の歴史を持つ 和歌山県紀美野町「中田の棚田」

実はここ紀美野町にも、和歌山県「わかやまの美しい棚田・段々畑」に認定の「中田の棚田」があるんです。一度目に撮りに行った時にはまだ田植え前でしたが、二度目に行くと水がはられているところが見えました。前日に田植えが行なわれたそうです。

中田の棚田は、関西随一のススキの大草原で知られる和歌山県標高870mの生石高原(おいしこうげん)の麓に広がっています。

調べたところ、室町時代の文献に中田の棚田から多くのお米が高野山に納められていた記録があり、最盛期には約14万平方メートル(東京ドーム3個分)の水田が広がっていたとみられているそうです。

棚田の水源は生石高原のわき水を集落まで供給している全長600メートルの用水路 「竜王水」。今も棚田を支え続けているそうです。

70年前は50軒ほどが暮らしお米が作られていましたが、時代の流れとともに100枚近くある棚田のほとんどが耕作放棄地となってしまったそうです。

そんな中、紀美野町が中田の棚田再生に向けて活動を開始し、棚田地域振興法も追い風となって指定棚田の認定を受けたとのことです。現在は中田の棚田プロジェクトチームが結成され、体験イベント等様々な取り組みをはじめています。

正式な展望台や駐車場はありませんが、ちょうど棚田全体が見渡せるところに大きくせり出した路肩があります。写真を撮るために一時停車する場合は、車道の通行の邪魔にならないように気をつけて下さいね。

中田の棚田(和歌山県紀美野町)

「日本の棚田百選」認定 和歌山県有田川町「あらぎ島」

お隣の有田川町には、和歌山で唯一「日本の棚田百選」に選ばれ、国の重要文化的景観にも選定されているあらぎ島があります。

あらぎ島といっても島ではなく、高野山を源とする有田川の浸食によってできた河岸段丘上に、大小54枚の水田(約2.4ha)が扇状に段々で作られている棚田です。四季折々に美しく変わる風景がみどころと言われています。

有田川町「あらぎ島」 写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟

あらぎ島は江戸時代初期に、地元の大庄屋さんが村民救済のために私財を投じて開発した新田のひとつだそう。現在は6軒の農家さんにより耕作されているとのことです。

あらぎ島への立ち入りはできませんが、有田川をはさんだ対岸に棚田を見渡せる展望台があります。そこは高野街道と龍神街道の分岐点でもあるそうです。

あらぎ島(和歌山県有田川町)

「日本の棚田百選」認定 千葉県鴨川市「大山千枚田」

ところ変わって、スタッフがGWに冒頭にご紹介した千葉県鴨川市の大山千枚田に行ってきました。都心から最も近いこともあり、年間何万人も訪れるほどの人気で、おそらく日本一有名な棚田ではないでしょうか。

大山千枚田は房総半島南部の3.2ヘクタールの斜面に江戸時代に開かれたと言われています。大山千枚田は、雨水のみで耕す天水田(てんすいでん)として日本で唯一の棚田だそうです。雨がちゃんと降る土地柄、ということでしょうか。

現地はあいにく大雨と強風の嵐のようなお天気だったそうですが、ちょうど弊社の全天候型レインウェアドノソラレインパーカを持っていたため、外に出て棚田を見て写真や動画も撮れたようです。

千葉県は8月中旬から新米が摂れる関東一の早場米の産地。一面の棚田には水がはられ、田植えは終わっていたそうです。嵐の中の棚田もなかなか風情があり見事だった、ずっと眺めていたい場所だと言っていました。

本当に見事な風景ですね。あいにくのお天気でも、田んぼに雲が映って綺麗です。晴れた時はどれほど綺麗なことでしょう。

なお、無料駐車場はオーナー・学校体験車両優先のため、一般の観光客は駐車場利用が出来ない場合もあり、しかも連休等はかなりの混雑で駐車できずに見れない場合もあるようなので、現地を訪れる際は事前に情報を確認した方がよさそうです。

大山千枚田(千葉県鴨川市)

世界の森林率ランキング第3位!平地の少ない日本の国土

古墳時代から棚田があったということから、私たちの住む日本はそれほど平地が少ない国土だと改めて思い、久しぶりに日本の国土(地図)全体を眺めてみました。

日本は周囲をぐるりと海に囲まれた島国。国土は西から東まで山脈が日本列島を貫き、山が多く森林に恵まれていることから、山の幸、海の幸両方の豊かな恵みを私たちは受けて暮らしています。

調べたところ、日本の国土の約7割が山などの森林で、世界の森林率ランキング(OECD加盟国)によると日本は何と第3位。これは驚きです!

世界の森林率の平均は約30%だということですので、日本の国土がいかに森林に恵まれているかわかります。

今は人間が暮らせるなだらかな土地に日本人約1億人超えが暮らしています。国民の主食であるお米を確保するために、先人たちは森林を開墾して、厳しくとも棚田でお米を作る方法を見出したのでしょう。先人たちの知恵と努力に心から感謝です。

順位森林面積(1000ha)森林率(%)
1フィンランド22,40973.7%
2スウェーデン27,98068.7%
3日本24,93568.4%
4韓国6,28764.5%
5スロベニア1,23861.5%

森林・林業学習館 世界の森林率ランキングより

棚田の役割

調べたところ、棚田のいいところは

・お米が摂れること
・美しい景観
・それによる地域活性化
・伝統文化保存・継承

それだけではありませんでした。

棚田には山に降った雨を蓄える保水力があり、地すべりや洪水等を防ぐ役割があるそうです。そして、様々な生き物を育む生態系の宝庫としての役割もあるとのことです。

これらのことから、住民をはじめいろんな組織や団体や各方面の専門家や個人など、みんなが力を合わせて知恵を出し合ってこれからも棚田の風景を守り、お米を作り続けられることを願っています。

(参考資料)
・じゃらんニュース

https://www.jalan.net/news/article/193600/
・和歌山県ホームページ 令和3年度「中田の棚田」(紀美野町)をわかやまの美しい棚田・段々畑に認定しました。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070110/d00207038.html
・近畿農政局ホームページ 棚田で人をつなぐ、棚田が時代(とき)をつなぐ(紀美野町中田の棚田)
https://www.maff.go.jp/kinki/tiiki/wakayama/photo/img/2021nakatanotanadasaisei/nakatanotanada_saisei.html
・中田の棚田再生プロジェクト http://kiminoriceterrace.com/
・棚田百選
http://tanada100.com/area/wakayama/aragi/index.html
和歌山県観光公式サイト あらぎ島見学
https://www.wakayama-kanko.or.jp/spots/83/
トラベル JP日本の棚田百選「あらぎ島」も!和歌山・有田川町の絶景スポット
https://www.travel.co.jp/guide/article/26142/
ニシタビ 和歌山の絶景棚田「あらぎ島」がスゴイ!見頃やアクセス・駐車場情報を紹介!
https://ryotawada.com/aragijima/
・<彩 首都圏の四季を訪ねて>神秘の青 映える天地 大山千枚田(千葉県鴨川市)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/245721
・SNSで人気 “絶景棚田”の奥深き役割とは
https://agri.mynavi.jp/2018_06_26_30266/
・鴨川市公式ホームページ 日本の棚田百選「大山千枚田」
https://www.city.kamogawa.lg.jp/site/kamogawa-kanko/816.html
・森林・林業学習館 世界の森林率ランキング
https://www.shinrin-ringyou.com/forest_world/menseki_world.php
・国土を知る / 意外と知らない日本の国土
https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary07
・環境省 生物多様性
https://www.env.go.jp/nature/biodic/inochi/pdf/full.pdf
(画像)
・有田川町「あらぎ島」 写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟

 

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