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甘酒のある暮らし

皆さま、こんにちは。寒さのなかにも春の訪れを感じます。温州みかんの季節が終わり、今は不知火(しらぬい)や清見等オレンジが出回っています。柑橘も美味しいですが、この時期はキウイもお店に並びます。

東京の友人によるとスーパーで和歌山県産のキウイを見たことはないそうですが、実は果物王国和歌山ではキウイも作っています。農林水産省のデータを調べたところ、和歌山はキウイフルーツ収穫量全国第3位。

農林水産省 「令和4年産キウイフルーツの結果樹面積、収穫量及び出荷量」調査データをもとにグラフ・表 作成

上位3県で約50%になります。いずれもみかんの産地として有名ですね。それについて、和歌山県の食品流通課さんのホームページに記載がありました。

1970年代に温州みかん等の柑橘類の生産量が増えすぎて価格が暴落。その時に転換作物としてキウイが栽培されるようになったそうです。

キウイは秋から冬にかけて収穫され、低温貯蔵庫(2度から4度)で貯蔵し、追熟させてから1月~4月に出荷され、お店に並びます。主力品種はヘイワードだそうです。

和歌山のキウイは大きくて甘くて美味しいです。りんごに酸味のある柑橘系と甘いキウイ。それにヨーグルトをかけて一緒に食べるのが私は好きです。緑色の果物が入ると彩りも綺麗です。

 

 

甘酒ブーム

ところで、私は一年中ヨーグルトを食べています。一番好きな発酵食品です。まわりに聞いたところ、他の季節に比べると冬は冷たいヨーグルトは控えがちになるとか。

冬に欲しくなる発酵食品と言えば甘酒。甘酒はブームが続いているようです。今は米麹を使ったノンアルコールの甘酒、冷やして飲む甘酒が主流になっており、いろんな風味の甘酒が販売されていました。

調べたところ、免疫力アップにいいと発酵食品が注目され、2011年から塩麹ブームに。その後朝の情報番組で、 “飲む点滴”というキャッチフレーズで甘酒の栄養効果が、その後も他の情報番組で“飲む美容液”と紹介されたことがきっかけで、米麹を使った甘酒が主流になったようです。

子供頃から暮らしの中に「酒粕」がありました

 

お恥ずかしながら私、甘酒はどれも酒粕(さけかす)で作られていると思っていました。というのも、子供の頃から日本酒の初絞りが終る頃、近くの酒蔵さんから酒粕を頂いて、甘酒を作って家族皆で飲んで育ちました。

おやつには粕板を火鉢で焼いて、柔らかくなったところにお砂糖をまぶして食べていました。時々無性に食べたくなります。美味しくて体がポカポカになり、時々酔っ払っていました(笑)

お酒の匂いが強くて苦手という方もいらっしゃいますが、普段お酒を飲まない私でも、酒粕の風味と香りは好きです。

確かに匂いは強いですが、飲んだり食べてみると以外と美味しかったという話も聞きます。納豆と似ているかもしれませんね。

ちなみに缶の甘酒で有名な森永製菓さんは、1969年の発売当初から酒粕・米麹の2種類を使った甘酒を販売していたことがわかりました。

調べたところ「冷やし甘酒」を提案したのも森永さんでした。2011年の東日本大震災の発生直後、全国的に省エネが求められた際、夏の健康維持に「冷やし甘酒」を提案したところ、夏場の消費が伸びるようになったそうです。

久しぶりに森永さんの甘酒を冷やして飲んでみました。すっきりと飲みやすかったです。缶が見当たらなかったので紙パックを買いましたが、缶の方が馴染がありますね。

米麹だけの甘酒も飲んでみましたが、私は酒粕の方が好きです。

酒粕由来の甘酒、米麹由来の甘酒。味やアルコールを含む・含まない以外どのような違いがあるのか、調べて見ました。

甘酒2種類(米麹・酒粕)について

大手酒造会社菊正宗さんのブログに酒粕由来の甘酒・米麹由来の甘酒の違いについて掲載されていました。そちらと他情報を参考にしながらまとめてみました。

 米麹甘酒酒粕甘酒
原料米・米麹酒粕・砂糖
作り方

蒸した米に米麹を加えて発酵させたもの

日本酒を造る際の残った搾りかす。
酒粕を水で溶かして、砂糖添加により甘さを調整
主成分

ブドウ糖、アミノ酸、オリゴ糖、ビタミンなど

ビタミンB2、B6、ナイアシン、葉酸などのビタミン

特長

・ノンアルコール
・栄養素が豊富に含まれることから“飲む点滴”と呼ばれている
・米と麹由来の自然な甘さがある(砂糖を入れなくてもそのまま飲める)

・アルコールが含まれる
・お酒の種類によって味や風味も変わる
・「板粕」「ばら粕」「錬り粕」「踏込粕」等様々なタイプがある

効果

・免疫賦活効果
・整腸作用が期待される
・美肌効果
※“飲む美容液”と称される“エルゴチオネイン”が含まれる

・摂取した脂肪やコレステロールを体外へ排出
・小腸での糖の消化吸収を抑えて血糖値の急上昇を抑制
・整腸作用が期待できる
・美肌効果
※保湿効果、肌細胞のコラーゲン密度を高める“α-EG”が含まれる

甘酒の価値が知られると、健康維持・美容効果・手軽な栄養補給を求めて、消費者が自宅で市販の甘酒を使ってアレンジ料理を作ったり、米麹や酒粕を使って甘酒やスムージー・スイーツ・料理を作るようになってきているようです。

甘酒や麹を使った健康レシピ本もたくさんでています。一冊買ってみようと思い調べたのですが、たくさんあって迷って選べませんでした。

私の子供の頃、昭和の暮らしの中に酒粕があったように、普段から醬油や味噌のように甘酒を取り入れるようになってきていることを知りました。

甘酒の歩み

ところで甘酒はいつ頃から飲まれていたのでしょうか。大手味噌製造会社のマルコメさんのホームページに甘酒の歴史について掲載されていました。その他情報も調べ、まとめてみました。

・甘酒のルーツは醴酒(れいしゅ)。 
※奈良時代の日本最古の歴史書に記載あり。

・古代から中世まで朝廷のあった関西では醴酒(米と麹と酒を用いた酒)は夏の飲み物。
※平安時代の法律書に記載あり。

・安土・桃山時代に「甘酒」という文字が登場。 
※1597年戦国時代末期(安土・桃山時代)の国語辞典に記載あり。

・江戸時代前期、甘酒は麹を水に浸しその絞り汁を米などの原材料と合わせて発酵させた物。夏の季語として扱われ、夏の飲み物だった。
※1643年(寛永20年)の料理書に記載あり。

・江戸時代は暑さで病気になる人も多く、特に夏に死亡率が高かった。幕府は健康保持、栄養補給に甘酒を奨励し、価格も四文を超えないようにお触れをだしていた。

・江戸時代の武士の間では「悪酔い防止」のため、酒席の前に甘酒を飲むことが武士の作法とされた。 

・江戸時代中期、甘酒は米・麹・水・酒で作られた。 
※1689年元禄2年の料理書に記載あり。

・その後の江戸時代中期、甘酒は米・麹・水で作られた。麹の粒を残したまま飲むか、しぼって飲むか、飲み方が記載されていた。 
※1712年正徳2年の辞典に記載あり。

・江戸時代後期、1767年頃までは甘酒は冬にも売られるようになった。 
※その頃の松尾芭蕉の誹諧「寒菊や 醴造る 窓の前」にも読まれている。寒菊は冬の季語。

・江戸時代後期、1814年頃、京都・大阪では夏の夜のみ甘酒売りが一碗六文(120~180円)で販売。江戸は一碗八文(160~240円)。上野や浅草などの店では一年中販売された。 
※三都(京都・大阪・江戸)風俗・事物百科事典「守貞謾稿(もりさだまんこう)」に記載あり。他情報を参考に甘酒の価格を江戸は一椀四文と前述しました。江戸時代の中で時期が違うのか?不明です。

守貞謾稿(もりさだまんこう) 巻6 甘酒売り (国立国会図書館デジタルコレクション)

・江戸時代後期(文政年間 1818-1829年)、厳しい道中の東海道の箱根地区には9箇所「甘酒茶屋」が設けられていた。その他坂の上や山道を登りきったところには「甘酒茶屋」があった。

・明治(1868~1912年)、東京では夏から秋に甘酒売りが「甘い~甘い~」という掛け声で市中を売り歩いた。甘酒は麹を使用。道具の貸出や、販売用の甘酒を売ってくれる甘酒問屋という商いもあった。

・大正時代(1912~1926年)、甘酒売りが甘酒問屋から道具を借り受け、労働者が集まる街のほか、学生の街、芸者屋や料理店の待合茶屋等を売り歩いた。

甘酒のある暮らし

古くから京都・大阪では甘酒は夏の飲み物で、江戸でも夏の健康維持のために幕府も甘酒を奨励する程、夏の飲み物でした。それが冬にも飲まれるようになり、一年を通じて飲まれるようになったということですね。

東京で甘酒売りが見られたのは大正時代辺りまでのようです。関東大震災や戦争があり、戦後は高度経済成長期に突入。人々の生活様式も変わり、瓶や缶の甘酒が発売されるようになるまでは甘味屋さんに行ったり、酒蔵さんで買ったり、各家庭で作られていたのでしょう。

4年前のコロナにより私たちの暮らしも変わりました。以前より健康に気を使い、自宅で過ごす時間が多くなったこともあって、甘酒ブームが続いているのかもしれませんね。

これからも甘酒に注目したいと思います。酒粕の甘酒を飲んだことがない方は、作って冷やして飲むとお酒特有の匂いも和らぎますよ。お試し下さい。

 

(参考)
・農林水産省 「令和4年産キウイフルーツの結果樹面積、収穫量及び出荷量」調査データ

https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/kiwi/r4/index.html
・和歌山県 農林水産部 農林水産政策局 食品流通課  わかやま食材テロワール 「キウイフルーツ」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/
・和歌山県 那賀振興局 「キウイフルーツ」
・森永製菓株式会社 甘酒
https://www.morinaga.co.jp/amazake/
・マルコメ株式会社 
甘酒の歴史
https://www.marukome.co.jp/amazake/amazake_festival/column/219/
・読売新聞 2017/02/20 
ブーム拡大中 意外と知らない甘酒のヒミツ
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20170220-OYT8T50037/
・菊正宗ネットショップブログ 
2021/09/01 菊正宗「大吟醸deあま酒」が“飲む点滴”“飲む美容液”と称される由縁。
2021/09/08  「大吟醸deあま酒」に配合された“5-ALA”成分は、 新型コロナウイルスに対する強い感染抑止効果に期待大との論文を発表。
https://www.kikumasamune.shop/blog/?m=20210908
・マネー現代 2021.07.13 夏の「甘酒」がすっかり定着したワケ…再ブームを巻き起こした「5つの要因」
https://gendai.media/articles/-/85055
・東洋経済オンライン 2016/10/23 森永製菓の「甘酒」が女性にバカ売れするワケ
https://toyokeizai.net/articles/-/141394
・カヤマ醸造所
https://www.kayamasyuzou.com/amama/history.html
・甘酒からみる発酵食文化(1)江戸時代から愛される栄養ドリンク「甘酒」の歴史
https://haccomachi.jp/column/277/
・甘酒からみる発酵食文化(2)それぞれに個性が!酒粕甘酒と米麹甘酒の違いは?
https://haccomachi.jp/column/439/
(画像)
・守貞漫稿(もりさだまんこう)巻6 甘酒売り(国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2592395/1/23