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サンマとみかんの皮

皆さま、こんにちは。長かった暑さも過ぎて日の入りが早くなり、過ごしやすい季節になりました。秋の味覚を味わえる時期ですね。みかん、りんご、柿、いちじく、さつまいも、栗、そして秋刀魚。書いているだけでお腹が空いてきます。

食欲の秋に水を差しているのが近頃の物の値上り。和歌山に暮らしているとみかんの値上りはそれ程感じませんが、りんごは1個200円以上。これまでの2倍以上です。

東京近郊の友人に聞いてみたところ同様で、10月下旬時点でりんごは1個200円程度。サンマも1匹200円程度だそうです。ちなみに梨が1個480円で驚いた!と言っていました。

確かに1匹100円以内で手に入っていた頃もありましたが、200円なら手に届くお値段ですよね。

10月下旬時点で、福島県に近い三陸沖に4年ぶりにサンマが多く集まる漁場が形成されたとか。気仙沼港では近海で操業する小型船が2年ぶりに水揚げした等、嬉しいニュースも入ってきています。

全国のサンマ漁の漁師の皆さん、どうぞお気をつけて頑張って下さいね!

幸いお客様から初物のサンマを頂きました。新鮮でピーンとしたサンマで、大きさは小ぶりでもなく普通。脂がのっていてとても美味しかったです。

今のように少し肌寒くなる頃の夕暮れ時、家々に灯りがともり、ご近所からサンマを焼くいい匂いがしてくると、私は幸せを感じます。日本人でよかった!と思います。

皆さんが幸せを感じるのはどんな時でしょうか。

サンマと和歌山

実はサンマは和歌山に馴染のあるお魚です。以前ブログでご紹介しましたが、日本のサンマ漁は約300年前の江戸時代中頃、紀伊半島の東に広がる熊野灘が発祥とされています。

現在サンマの獲れる主要な産地としては北海道と三陸が有名ですが、戦前は熊野灘が全国一の生産量をあげていた頃もあったそうです。サンマは三陸沖から寒流に乗って熊野灘に南下していたのです。

熊野灘にくるまでの間、潮にもまれて身が引き締まり、脂も適度に落ちてたサンマは熊野灘側では丸干しや寿司に使われるようになりました。紀伊水道側の雑賀崎地域では干物にして和歌山城の徳川家に献上し、また、塩漬けにして江戸に送っていたことが記録として残っているとのことです。

和歌山県内のサンマ郷土料理

・サンマのなれずし

和歌山の郷土料理「なれずし」は大体サバで作られますが、県南部・熊野地方ではサンマで作られます。なれずしはお酢を使わずに発酵させたもので、サンマ寿司と呼ばれるお寿司とは別のものです。

私はサバの早なれずし(あせずしとも言います)はたまに食べますが、サンマのなれずしはまだ頂いたことがありません。

・サンマ寿司

サンマ寿司は、開いて塩漬けしたサンマを柑橘系のお酢でしめて酢飯に載せた熊野地方の郷土料理です。潮岬を境に、西牟婁郡(にしむろぐん)では腹開き、東牟婁郡(ひがしむろぐん)では背開き、と捌き方が違うそうです。

サンマ寿司は随分前に頂いたことがあります。焼いたサンマ寿司もあるそうです。

出典:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 さんまずし(背開き) 和歌山県

 

出典:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 さんまずし(腹開き) 和歌山県

・サンマの丸干し

サンマを塩もみし一日置いてから海岸に2~3日干したものです。サンマ寿司と一緒に熊野地方で食べられています。

・灰干しサンマ

こちらも以前ブログでご紹介しましたが、和歌山の特産に雑賀崎に灰干しサンマがあります。

干して乾燥させるのではなく、灰干しサンマはサンマを開いて塩漬けし、水分を通すセロファンで包み、高い吸湿性をもつ火山灰の中に数時間入れて余分な水分を抜き、お魚を乾燥させる特殊な製法で作られています。

材料は現在北海道産が使われているようです。臭みがなくしっとりとして旨味が凝縮されているのが特長です。ちなみに灰干しサンマ寿司もあります。

灰干しサンマ photo by Rinko Nakamura  ©Kuboseisakusyo

サンマを焼くと後片付けが・・・

サンマの話を書いているとサンマが食べたくなってきました。ところで、皆さんはお魚をどのようにして焼いていますか?

ガスコンロのグリル、魚焼き網、魚焼きグリルロースター、フライパン、オーブン等。今はいろんな焼き方がありますね。我が家は魚焼きグリルロースター使っています。

どのように焼いてもお魚を焼くとグリルや網の後片付けがやっかいです。洗剤を使っても手強い汚れの時もありますし、汚れは落ちてもお魚の臭いはなかなか取れません。

photo by Rinko Nakamura  ©Kuboseisakusyo

みかんの皮は優れもの

先日みかんを送った友人が、お魚を焼いた後の汚れや臭いはみかんの皮でグリルや網を掃除すれば取れる、と教えてくれました。みかんのある季節はみかんの皮を使い、春夏はオレンジの皮を使っているそうです。

みかんの皮

汚れた天板に水を張って網を入れ、その中にみかんの皮1個分をいくつかに千切って入れ、一緒につけおきします。

暫くつけ置きした後、皮の表側(オレンジ色)を網や汚れたところに当ててこすり洗いします。軽い汚れの時は汚れも臭いも大体落ちますが、その後洗剤をつけて普通に洗えばいいそうです。

臭いだけ気になる時は、みかんの皮をお湯でよく洗い、まず皮の表側(オレンジ)を臭みのあるところに当てて拭き、次に裏側(白)で拭いて自然に乾かせばいいとのこと。皮のカスや油分のベタつきが気になる時は、お湯に浸して固く絞った布巾で拭くとよいそうです。

確かに台所洗剤やお風呂の洗剤にはよくオレンジの成分が入っていますよね。調べてみると、柑橘類の皮にはクエン酸・リモネン・ペクチン等の成分が含まれ、お掃除によい効果がありました。複数の情報を参考にまとめてみました。

クエン酸柑橘類や酢に含まれる酸性成分で自然由来
水垢などアルカリ性に効果的
リモネン天然の油成分。油になじみやすく、油の溶解に効果があり、
界面活性剤と同じように汚れを落とすはたらきがある
ペクチン皮の白い部分や筋に多く含まれる成分で食物繊維
コーティング効果やツヤ出し効果があり、
掃除した後の状態をきれいに保つ効果がある

みかんの皮の表側(オレンジ色)の油成分リモネンが、油汚れの部分に溶け出して汚れを落とすしくみなんですね。リモネンという成分はエッセンシャルオイルでよく見かけます。成分ひとつとってみても、いろんな効果があるのですね。

次の情報が参考になりました。みかんの皮を茹でてお掃除用のみかんスプレーを作ってみようかと思いました。

いかがでしたでしょうか。皆さんのお役にたてれば幸いです。

季節の美味しいものを頂いて、毎日元気に頑張っていきましょう。そして、サンマを焼いた後のお片付けにはぜひみかんの皮を使ってみてくださいね。

 

(参考資料)
・「本場の本物」紀州雑賀崎(さいかざき)の灰干しさんま(一般社団法人 本場の本物ブランド推進機構)
https://honbamon.com/product/29-kaikazaki-hoshisanma/index.html
・紀伊のサンマ漁 (和歌山県)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071001/d00207202_d/fil/33.pdf
・さんま漁業(全国さんま棒受網漁業協同組合)
http://www.samma.jp/fishery.html
・うちの郷土料理 さんまずし(背開き・腹開き) 和歌山県(農林水産省Webサイト)
情報提供元 : 郷土料理と日本型食生活(和歌山県生活協同組合連合会)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sanma_zushi_wakayama.html
・さんまの丸干し(くまどこ)
http://www.kumadoco.net/dictionary/report.php?no=1
・みかんの皮を使った掃除の裏技6選! 油汚れ、イヤな臭いを取る方法 マイナビ子育て
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/5678
・みかんの皮を捨てる前に!ササッとできる簡単掃除のテクニック5つ
https://mrs.living.jp/k_life/article/4041607

 

年越しは、そばよし、サバよし!

皆さまこんにちは。12月は水産合羽製造の繁忙期で追い込み作業が続いておりましたが、ようやく年内作業を無事終えることができました。これでやっと年越し・お正月を迎えることができます。皆さまのご協力に感謝いたします。

年越しサバ

年越しと言えばおそば。和歌山ではここ紀美野町や有田川町など、地域によっては年越しそばの他に鯖を食べて新年を迎える「年越しサバ」の風習があります。


地域によって鯖を丸ごと焼いた「焼き鯖」と「塩鯖」があり、ここ紀美野町では焼いたお頭付き鯖を一尾丸ごと食べるのが一般的です。各家庭で焼いたり、最近では炭火で2~3時間かけて焼き上げる等お店で焼いたものも売っています。

「なぜ年越しにサバなの?」と東京の友人に聞かれて答えに困ってしまいました。調べてみたところ、山間地域では新鮮なお魚が手に入らず日持ちする塩サバ等を焼く風習ができたのではないかと、過去の和歌山経済新聞の記事に載っていました。

我が家ではサバはもちろんですが、カツオを好んで食べています。大きなサバやカツオは食べきれず年越して食べることもあります。

和歌山とサバ

実は鯖は和歌山と縁のあるお魚です。和歌山の郷土料理として有名な「柿の葉寿司」も鯖がメインでその他しいたけやエビの入った押し寿司です。江戸時代に生まれたと言われています。昔は秋祭りなどの行事で食べられていたそうですが、今ではバリエーションもいろいろで鯖だけではなく鯛やサーモンや熊野牛などの具材が使われているものもあるようです。

画像:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 和歌山県 柿の葉寿司(かきのはずし)

そしてこちらも有名な「なれずし」。特有の発酵臭があり好き嫌いの分かれるお寿司ですよね。改めて調べてみると和歌山の「なれずし」は日本三大なれずしの一つといわれているそうで、約800年以上の歴史があるそうです。約800年前というと鎌倉時代。

1ヵ月以上塩漬けした鯖を1日がかりで塩抜きして、古米の上に鯖をのせて握ったものをアセの葉等で巻きつけて紐でくくって桶にびっしりと詰め、重石を載せて5日ほど漬け込むとご飯の発酵した特有の匂いがして美味しくなるようです

画像:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 なれずし 和歌山県

和歌山のなれずしには「早熟れ(はやなれ)」「本熟れ(ほんなれ)」の2種類がありますが、「はやなれ」は酢を使ってあまり発酵させずに作るためクセが少なくて食べやすく美味しいですよ。

その他、鯖飯(さばめし)があります。

昔、みかんを収穫し、船に積みこむ作業が終わると、あつあつの鯖飯(さばめし)とお酒で、みかんが高値で取り引きされることを祈ったと言われます。桃山町奥安楽川(あらかわ)地区では、祭りや春・秋・冬に各家庭で大勢のお客さんを招く時に今もよく作ります。この地域は奥深く、昔は交通の便が悪かったのですが、紀の川を船で行き来ができました。そのため熊野灘でとれたさばを日持ちするように塩さばにしたものがよく使われました。脂ののりきった塩さばと葉ねぎが混ざり合い、食べると力がつく気分になりました。 -全国学校栄養士協議会 伝えたい秋の⾏事⾷ 和歌山県 鯖飯(さばめし)-

ここ紀美野町のように海から少し離れた土地では、昔は足の早い鯖を手に入れるだけでも輸送上大変だったことでしょう。お塩のおかげですね。

また前回のブログで取り上げた山椒や今回の柿の葉等、先人の知恵と工夫で抗菌・抗酸化作用のある植物を使ってお魚の保存性を高めてくれたおかげで食文化が今に続いていることに心から感謝です。

皆さま、本年も大変お世話になりました。

皆さまがご家族やご友人と年越しそばや年越しサバ、なれずし等それぞれの郷土料理や家庭料理で食卓を囲んで、穏やかな年越し・お正月を迎えられることを心よりお祈りいたしております。


参考:
・農林水産省 うちの郷土料理 和歌山県 柿の葉寿司(かきのはずし)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/kakinoha_zushi_wakayama.html
・農林水産省 うちの郷土料理 和歌山県(なれずし)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/nare_zushi_wakayama.html
・全国学校栄養士協議会 和歌山県 伝えたい⾏事⾷ 11月〈秋祭り〉鯖飯(さばめし)
https://www.zengakuei.or.jp/gyoji/wakayama_3.html
和歌山県ふるさとアーカイブ 【年越しに食べる物】
https://wave.pref.wakayama.lg.jp/bunka-archive/syokubunka/index.html
和歌山経済新聞 和歌山・有田川町で恒例「年越しサバ」販売 丸ごと食べて新年祝う 
https://wakayama.keizai.biz/headline/1265/
・この味と香りがクセになる!ふるさとの味「なれずし」 一般社団法人 湯浅町観光協会 「海と山の小さなまちの湯浅さんぽ」
https://www.yuasa-kankokyokai.com/article/4906/
※使用画像:雪と南天の赤い実 無料写真素材「花ざかりの森」https://forest17.com/