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身の回りの意外なものに入っているみかんの皮

皆さま、こんにちは。ここ数年秋らしい秋が短いですね。冷房を使わなくなったと思ったら、もう暖房をつけています。春秋物の洋服の出番がないとスタッフも言っていました。

さて、前回に引き続き、今回のブログのテーマもみかんの皮です。みかんの皮は私たちにいい香りを届けてくれるだけではなく、油汚れや水垢等汚れを落としてくれるお掃除の味方だと知りました。

以来、我が家ではみかんの皮が大活躍。お魚を焼いた後の魚焼きグリルに熱湯を注ぎ、みかんの皮をいくつかに千切って入れ、暫くつけ置きした後、皮の表側(オレンジ色)でこすり洗いをすれば、きれいに汚れも臭いも取れるのにはびっくりです。

お風呂の水垢もみかんの皮の白い部分で何度も拭き掃除すると結構取れます。おまけにみかんのいい香りがするので一石二鳥。みかんの皮はカビが生えて長く持ちませんから、みかんを食べた後はお掃除するとちょうどいいです。

さらに調べて見ますと、お掃除の味方だけではなく、私たちの体にもいい影響を与えてくれる身近なものに利用されていることがわかりました。

みかんの皮を乾燥させたものを陳皮(ちんぴ)といい、昔から漢方薬等に使われてきました。ちなみに「陳」は「古い」という意味。漢方の世界では古いものの方が効果があるとされているそうです。実はこの陳皮(ちんぴ)。私たちの身近なものに利用されていました。

ガムや炭酸飲料等の食品や日用品の香料

いい香りからもわかるように、みかんの皮には香りの成分リモネンなどを主成分とする精油を含み、アロマテラピーにも利用されリラックス効果やリフレッシュ効果があります。食品や入浴剤などの香料としても陳皮(ちんぴ)が使用されているようです。リニューアル前のクロレッツ(ガム)にも入っていたかと思います。

胃腸薬や風邪薬の成分

陳皮は胃腸薬や風邪薬の成分に入っていることが多いようです。早速我が家にあった胃腸薬を確認したところ「ちんぴ」が入っていました。

陳皮(ちんぴ)の漢方薬・生薬についての効能を調べてみました。咳や痰を鎮める働きがあることから風邪薬に、消化不良や食欲不振等、胃腸を調整する働きがあることから胃腸薬に入っていることが多いようです。

漢方的には、健胃、去痰、理気の効能があり、消化不良、食欲不振などの胃部不快感を取り除くのに用いられています。(漢方薬のきぐすり.com )

漢方において、陳皮は胃酸の分泌を促進させるとともに、胃から腸への排出を早めたり、腸の蠕動運動を促進させたりする「理気薬」として使用されてきました。そのため多くの漢方処方の胃薬(補中益気湯や六君子湯など)には陳皮が配合されています。(養命酒 ハーブ図鑑 捨てる前に!漢方にも使われる陳皮(みかんの皮)の効能4つと活用法)

それだけではなく、冷え改善の効果もあるそうです。

陳皮は血管を拡張させて血流を良くし、末梢体温を維持する効果のある「へスぺリジン(ポリフェノールの一種)」を含みます。そのため、陳皮を細かく刻んで料理に混ぜたり、お風呂に入れて入浴剤にすると冷えの改善にも役立ちます。
(養命酒 ハーブ図鑑 捨てる前に!漢方にも使われる陳皮(みかんの皮)の効能4つと活用法)

七味唐辛子の原材料

さて、次に私たちに一番馴染のあるものとしては七味とうがらし。その中に陳皮が入っていました。七味唐辛子は「薬研堀(やげんぼり)」とも呼ばれ、唐辛子を主とした薬味や香辛料を調合して作られる日本の調味料。もともとは漢方薬だったそうです。おうどんやおそばに欠かせない七味が、漢方薬とは思いませんでした。

早速我が家の七味唐辛子の原材料を確認してみたところ、赤唐辛子・黒ごま・ちんぴ・山椒・麻の実・けしの実・青のり、の7種。確かにちんぴが入っていました!

・七味とうがらしの誕生

七味唐辛子の発祥は東京浅草にある「やげん堀」というお店。創業1625年(寛永2年)初代からし屋徳右衛門さんが漢方薬からヒントを得て、吟味した7種の素材で創ったのが始まりとのことです。

やげん堀の七色唐辛子は献上品になり、徳川三代将軍家光公に喜ばれて徳川の「徳」の字を賜わったそうです。そのことから、山に徳の字ののれんを掲げておりロゴにもなっているそうです。

・薬研堀(やげんぼり)とは?

東京・浅草の七味とうがらし屋さん「やげん堀」と「薬研堀(やげんぼり)」のつながりを調べてみました。「薬研堀(やげんぼり)」は現在の東京都中央区東日本橋にかつて存在した運河であり、堀周辺の通称地名。

広重『名所江戸百景 両ごく回向院元柳橋』,魚栄,安政4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1312241 (参照 2023-11-30)

広重の浮世絵をご覧下さい。両国の回向院より元柳橋を望む場面が描かれています。手前が隅田川、奥の橋が元柳橋で、これをくぐるのが薬研堀だそうです。

薬研(漢方薬を粉末にする器具)の 形に似た堀があったことから薬研堀町と名付けられたと言われています。

七味とうがらし屋「やげん堀」さんは今は移転されお店は浅草にありますが、創業当時は薬研堀にお店があったそうです。江戸時代、日本橋薬研堀町は医者や薬問屋が多く、別名「医者町」で通っていたそうです。創業の地が店名の由来になっていたのですね。

薬研堀(やげんぼり)とは
・江戸時代にあった運河の名前
・地名
・店の名前(東京・浅草「やげん堀」)
・七味とうがらしの通称

日本三大七味

東京・浅草「やげん堀」さん発祥の七味とうがらしですが、長野の善光寺の七味や京都清水の七味も有名ですよね。調べたところ、これら3つは「日本三大七味」と呼ばれていることがわかりました。

浅草の浅草寺・長野の善光寺・京都の清水寺と、いずれも歴史ある大きなお寺の門前にお店があります。一覧にしてみました。

お店の名前創業材料
東京・浅草 やげん堀 1625年(寛永2年)唐辛子、焼唐辛子、黒胡麻、山椒、陳皮、けしの実、麻の実
京都・清水寺参道 七味家本舗創業1655年(明暦年間)唐辛子、山椒、麻の実、白胡麻、黒胡麻、青のり、青紫蘇
信州・善光寺 根元八幡屋礒五郎1736年(元文元年)唐辛子、山椒、生姜、麻種、胡麻、陳皮、紫蘇

唐辛子・山椒・麻の実(種)・ごま、はどの七味にも入っていますが、東京・浅草やげん堀さんの七味には唐辛子と焼き唐辛子の2種類入っており、紫蘇は入っていません。

京都・清水の七味屋本舗さんの七味には陳皮が入っていませんが、青のりが入っていました。それから信州・善光寺の根元八幡屋礒五郎さんの七味には生姜が入っていました。

そう言えば、きつねうどんとかやくご飯のセットが美味しくて有名な大阪道頓堀今井さんでおうどんを食べた時、七味に山椒がたっぷり入っているのか、パンチの効いた味でした。

それがきつねうどんにとてもよくあったのを覚えています。七味の色も赤くなかったと思います。

唐辛子だけの一味唐辛子に対し、七味はお店によって材料や調合が少しずつ違い、お店独自の味や香りになっているのですね。我が家にあるスーパーで買った一般的な七味と一味ですが、比べても一目瞭然です。

辛みが欲しい時は七味に一味を足すといいかもしれませんね。

おうどんやおそばに欠かせない七味とうがらし。今から約400年も前の江戸時代から七味とうがらしがあったとは驚きです。テレビの時代劇や池波正太郎さんの時代小説等には必ずおそばを食べる場面が出てきます。

見たり読んだりしていると、おそばが食べたくなります。さすがにおそばに七味をふりかけるシーンは見たことはありませんが。

雪の降る寒い中、江戸っ子はきっと七味とうがらしをいっぱいかけて、身を寄せ合って屋台のおそばを食べていたのかもしれませんね。

東京・浅草 やげん堀(七味唐辛子)
信州・善光寺 根元八幡屋礒五郎(七味唐辛子)
京都・清水寺参道 七味家本舗(七味唐辛子)
道頓堀 今井(うどん屋)

お屠蘇にも陳皮(ちんぴ)

最後にご紹介するのはお屠蘇(おそと)。無病息災を願ってお正月にいただくお屠蘇(おとそ)にも陳皮(ちんぴ)が使われていました。日本酒をお屠蘇代わりに飲む方も多いですよね。

本来お屠蘇は屠蘇散(とそさん)と呼ばれる5~10種類の生薬を配合したものを、日本酒やみりんに漬け込んだ薬草酒とのことだそうです。

調べたところ、日本酒「久保田」で有名な新潟の朝日酒造さんにお屠蘇の情報が掲載されていました。

製造メーカーによって異なるそうですが、体に良い作用を持つものが調合されていて、一般的な屠蘇散(とそさん)の材料とお屠蘇の材料は以下のとおりです。

お屠蘇の材料
●日本酒(例:久保田 千寿)
●本みりん
●屠蘇散(とそさん)の中身
・山椒(サンショウ):胃を健やかに整える
・陳皮(チンピ):血行を良くして冷えの改善が期待できる
・桂皮(ケイヒ)または肉桂(ニッケイ):発汗や解熱、整腸作用
・桔梗(キキョウ):去痰作用や鎮静、鎮痛作用
・八角(ハッカク):抗菌作用や健胃作用
・白朮(ビャクジュツ):健胃作用や利尿作用
・防風(ボウフウ):発汗や解熱作用、抗炎症作用
(朝日酒造 お正月に欠かせない「お屠蘇(おとそ)」の意味とは。意外と手軽な作り方も紹介)

いかがでしたでしょうか。皆さんのお役にたてれば幸いです。

これから年末に向けてのお忙しい時期に風邪をひかないよう、風邪予防には和歌山のみかんがおすすめです。食べた後はみかんの皮をお風呂に入れたり、お掃除したり、是非やってみて下さいね。

そして、おうどんやおそばに陳皮(ちんぴ)の入った七味とうがらしをたっぷりかけて、体を温めて下さいね。

(参考資料)
・わかさの秘密 ちんぴ https://himitsu.wakasa.jp/contents/citrus-peel/
・漢方薬のきぐすり.com
https://www.kigusuri.com/kampo/jiten/shouyaku/chimpi/
・養命酒 ハーブ図鑑 捨てる前に!漢方にも使われる陳皮(みかんの皮)の効能4つと活用法

https://www.yomeishu.co.jp/health/3617/
・朝日酒造 お正月に欠かせない「お屠蘇(おとそ)」の意味とは。意外と手軽な作り方も紹介

https://magazine.asahi-shuzo.co.jp/know/136
・東京・浅草 やげん堀 https://yagenbori.jp/
・信州・善光寺 根元八幡屋礒五郎 https://www.yawataya.co.jp/
・京都・清水寺参道 七味家本舗 https://www.shichimiya.co.jp/

サンマとみかんの皮

皆さま、こんにちは。長かった暑さも過ぎて日の入りが早くなり、過ごしやすい季節になりました。秋の味覚を味わえる時期ですね。みかん、りんご、柿、いちじく、さつまいも、栗、そして秋刀魚。書いているだけでお腹が空いてきます。

食欲の秋に水を差しているのが近頃の物の値上り。和歌山に暮らしているとみかんの値上りはそれ程感じませんが、りんごは1個200円以上。これまでの2倍以上です。

東京近郊の友人に聞いてみたところ同様で、10月下旬時点でりんごは1個200円程度。サンマも1匹200円程度だそうです。ちなみに梨が1個480円で驚いた!と言っていました。

確かに1匹100円以内で手に入っていた頃もありましたが、200円なら手に届くお値段ですよね。

10月下旬時点で、福島県に近い三陸沖に4年ぶりにサンマが多く集まる漁場が形成されたとか。気仙沼港では近海で操業する小型船が2年ぶりに水揚げした等、嬉しいニュースも入ってきています。

全国のサンマ漁の漁師の皆さん、どうぞお気をつけて頑張って下さいね!

幸いお客様から初物のサンマを頂きました。新鮮でピーンとしたサンマで、大きさは小ぶりでもなく普通。脂がのっていてとても美味しかったです。

今のように少し肌寒くなる頃の夕暮れ時、家々に灯りがともり、ご近所からサンマを焼くいい匂いがしてくると、私は幸せを感じます。日本人でよかった!と思います。

皆さんが幸せを感じるのはどんな時でしょうか。

サンマと和歌山

実はサンマは和歌山に馴染のあるお魚です。以前ブログでご紹介しましたが、日本のサンマ漁は約300年前の江戸時代中頃、紀伊半島の東に広がる熊野灘が発祥とされています。

現在サンマの獲れる主要な産地としては北海道と三陸が有名ですが、戦前は熊野灘が全国一の生産量をあげていた頃もあったそうです。サンマは三陸沖から寒流に乗って熊野灘に南下していたのです。

熊野灘にくるまでの間、潮にもまれて身が引き締まり、脂も適度に落ちてたサンマは熊野灘側では丸干しや寿司に使われるようになりました。紀伊水道側の雑賀崎地域では干物にして和歌山城の徳川家に献上し、また、塩漬けにして江戸に送っていたことが記録として残っているとのことです。

和歌山県内のサンマ郷土料理

・サンマのなれずし

和歌山の郷土料理「なれずし」は大体サバで作られますが、県南部・熊野地方ではサンマで作られます。なれずしはお酢を使わずに発酵させたもので、サンマ寿司と呼ばれるお寿司とは別のものです。

私はサバの早なれずし(あせずしとも言います)はたまに食べますが、サンマのなれずしはまだ頂いたことがありません。

・サンマ寿司

サンマ寿司は、開いて塩漬けしたサンマを柑橘系のお酢でしめて酢飯に載せた熊野地方の郷土料理です。潮岬を境に、西牟婁郡(にしむろぐん)では腹開き、東牟婁郡(ひがしむろぐん)では背開き、と捌き方が違うそうです。

サンマ寿司は随分前に頂いたことがあります。焼いたサンマ寿司もあるそうです。

出典:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 さんまずし(背開き) 和歌山県

 

出典:農林水産省Webサイト うちの郷土料理 さんまずし(腹開き) 和歌山県

・サンマの丸干し

サンマを塩もみし一日置いてから海岸に2~3日干したものです。サンマ寿司と一緒に熊野地方で食べられています。

・灰干しサンマ

こちらも以前ブログでご紹介しましたが、和歌山の特産に雑賀崎に灰干しサンマがあります。

干して乾燥させるのではなく、灰干しサンマはサンマを開いて塩漬けし、水分を通すセロファンで包み、高い吸湿性をもつ火山灰の中に数時間入れて余分な水分を抜き、お魚を乾燥させる特殊な製法で作られています。

材料は現在北海道産が使われているようです。臭みがなくしっとりとして旨味が凝縮されているのが特長です。ちなみに灰干しサンマ寿司もあります。

灰干しサンマ photo by Rinko Nakamura  ©Kuboseisakusyo

サンマを焼くと後片付けが・・・

サンマの話を書いているとサンマが食べたくなってきました。ところで、皆さんはお魚をどのようにして焼いていますか?

ガスコンロのグリル、魚焼き網、魚焼きグリルロースター、フライパン、オーブン等。今はいろんな焼き方がありますね。我が家は魚焼きグリルロースター使っています。

どのように焼いてもお魚を焼くとグリルや網の後片付けがやっかいです。洗剤を使っても手強い汚れの時もありますし、汚れは落ちてもお魚の臭いはなかなか取れません。

photo by Rinko Nakamura  ©Kuboseisakusyo

みかんの皮は優れもの

先日みかんを送った友人が、お魚を焼いた後の汚れや臭いはみかんの皮でグリルや網を掃除すれば取れる、と教えてくれました。みかんのある季節はみかんの皮を使い、春夏はオレンジの皮を使っているそうです。

みかんの皮

汚れた天板に水を張って網を入れ、その中にみかんの皮1個分をいくつかに千切って入れ、一緒につけおきします。

暫くつけ置きした後、皮の表側(オレンジ色)を網や汚れたところに当ててこすり洗いします。軽い汚れの時は汚れも臭いも大体落ちますが、その後洗剤をつけて普通に洗えばいいそうです。

臭いだけ気になる時は、みかんの皮をお湯でよく洗い、まず皮の表側(オレンジ)を臭みのあるところに当てて拭き、次に裏側(白)で拭いて自然に乾かせばいいとのこと。皮のカスや油分のベタつきが気になる時は、お湯に浸して固く絞った布巾で拭くとよいそうです。

確かに台所洗剤やお風呂の洗剤にはよくオレンジの成分が入っていますよね。調べてみると、柑橘類の皮にはクエン酸・リモネン・ペクチン等の成分が含まれ、お掃除によい効果がありました。複数の情報を参考にまとめてみました。

クエン酸柑橘類や酢に含まれる酸性成分で自然由来
水垢などアルカリ性に効果的
リモネン天然の油成分。油になじみやすく、油の溶解に効果があり、
界面活性剤と同じように汚れを落とすはたらきがある
ペクチン皮の白い部分や筋に多く含まれる成分で食物繊維
コーティング効果やツヤ出し効果があり、
掃除した後の状態をきれいに保つ効果がある

みかんの皮の表側(オレンジ色)の油成分リモネンが、油汚れの部分に溶け出して汚れを落とすしくみなんですね。リモネンという成分はエッセンシャルオイルでよく見かけます。成分ひとつとってみても、いろんな効果があるのですね。

次の情報が参考になりました。みかんの皮を茹でてお掃除用のみかんスプレーを作ってみようかと思いました。

いかがでしたでしょうか。皆さんのお役にたてれば幸いです。

季節の美味しいものを頂いて、毎日元気に頑張っていきましょう。そして、サンマを焼いた後のお片付けにはぜひみかんの皮を使ってみてくださいね。

 

(参考資料)
・「本場の本物」紀州雑賀崎(さいかざき)の灰干しさんま(一般社団法人 本場の本物ブランド推進機構)
https://honbamon.com/product/29-kaikazaki-hoshisanma/index.html
・紀伊のサンマ漁 (和歌山県)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071001/d00207202_d/fil/33.pdf
・さんま漁業(全国さんま棒受網漁業協同組合)
http://www.samma.jp/fishery.html
・うちの郷土料理 さんまずし(背開き・腹開き) 和歌山県(農林水産省Webサイト)
情報提供元 : 郷土料理と日本型食生活(和歌山県生活協同組合連合会)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sanma_zushi_wakayama.html
・さんまの丸干し(くまどこ)
http://www.kumadoco.net/dictionary/report.php?no=1
・みかんの皮を使った掃除の裏技6選! 油汚れ、イヤな臭いを取る方法 マイナビ子育て
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/5678
・みかんの皮を捨てる前に!ササッとできる簡単掃除のテクニック5つ
https://mrs.living.jp/k_life/article/4041607

 

魚のいい相棒!山椒(さんしょう)と水と電気

皆さまこんにちは。秋も深まり店頭では冬物のコートやジャケットが並びクリスマスケーキの予約も始まりました。ここ紀美野町では実りの秋を迎え山はみかん色に染まっています。今はまだ酸味のある黄緑色から山吹色をした早生みかんがメインです。これから気温が下がるとお馴染みの橙色のみかんが出回ってきます。

柿の方も今は渋抜きのたねなし柿ですがそろそろ富有柿が出始めます。実は和歌山は柿の生産量は日本一。秋から冬にかけてこれからが楽しみです。

和歌山ちりめん山椒

さて先日東京方面から和歌山へ訪れた知人にお土産として和歌山のちりめん山椒をお贈りしたところ「ちりめん山椒って京都じゃなかったんですか?」と返ってきました。

ご飯のお供として皆さんに好まれるちりめん山椒。乾燥させたしらす干しにお醤油等で味付けをして仕上げに実山椒を混ぜたもので、これがあるとご飯が進んで困るという方もいますね。

確かに京都発祥として知られていますが、和歌山も有名です。実はみかんで有名な和歌山有田は原料となるしらすの産地。また欠かせない山椒の生産量は日本一!!です。さらに味付けに重要なお醤油の発祥地は和歌山。このように和歌山のちりめん山椒は3つの県特産物のコラボで作られているんです。各素材について調べたのでご紹介しますね。

使用画像 しらす(左)・しょうゆ(右)  無料写真素材「花ざかりの森」

和歌山の”しらす”

和歌山の主なしらすは紀伊水道の資源豊かな漁場で獲られています。しらすは鮮度が命。水揚げされたしらすはすぐに加工業者によって加工場へ運ばれすぐに釜茹でにされます。しらすの釜揚げは水揚げ産地でしか食べられませんが、足の早いしらすを水揚げ後すぐに釜揚げ加工し、天日干し等少し乾燥させることにより保存の利く「しらす干し」になります。そして「しらす干し」をもっと乾燥させると身近な食材「ちりめんじゃこ」になります。

先日も東洋のアマルフィとして有名な雑賀崎(さいかざき)の旅館に泊まった友人が、朝ご飯の釜揚げしらすのっけご飯の美味しさに感動して何杯もお代わりしたと言っていました。皆さんもぜひ和歌山で本場の釜揚げしらすのっけご飯を食べてみて下さいね。

ちなみにアマルフィとは織田裕二さん主演の映画「アマルフィ女神の報酬」の舞台にもなったイタリアのナポリ南東にある美しい海岸線のことだそうです。行ったことがないのでわかりませんが、ここ雑賀崎(さいかざき)から見る眺めは素晴らしいです。灯台からは淡路島や四国方面が一望できますのでぜひ一度訪れて欲しいところです。

雑賀崎(さいかざき)の風景

 

雑賀崎(さいかざき)の夜景

 

釜揚げしらすのっけご飯(漁り火の宿 シーサイド観潮)

和歌山の“ぶどう山椒

さて欠かせないのが山椒。主役はしらすなのに山椒がないと成り立たず“どちらが主役?”と思う程の存在感です。

和歌山のちりめん山椒

和歌山の山椒は全国生産量の6割を占め、2位以下を大きく引き離して堂々の日本一です。山椒の爽やかな香りが特有の臭みを和らげるため海や川のお魚との相性は抜群です。実は山椒はミカン科の落葉低木。かむとすっと爽やかな柑橘系の香りとともにピリっとした辛みがきます。

この山椒の辛み成分はサンショオールと呼ばれ、食欲増進や基礎代謝上昇、抗菌殺菌効果も高く、古くは薬用として栽培され虫下しとして使われていました。現在も和歌山県で生産されているぶどう山椒は製薬メーカーに納入されています。

一口に山椒と言ってもいろんな種類があります。一番身近な山椒と言えばやっぱりうなぎにかける粉山椒」でしょう。ちりめん山椒に使われているのは「実山椒」。「実山椒」は初夏に収穫されたみずみずしい青い実(青ざんしょう)こと。この辺りでは「ぶどう山椒」と呼ばれていて、収穫時には独特の爽やかな香りが漂ってきます。この「ぶどう山椒」を乾燥させて挽いたものが「粉山椒」になります。

その他にも日本料理には欠かせない「木の芽」として知られている「葉山椒」。高級割烹や懐石料理店で使われている「花山椒」。秋まで樹上で完熟させた山椒を収穫した「赤山椒」があるそうです。

そして硬い幹や枝は「擂り粉木(すりこぎ)」として使われています。このようなことから山椒は捨てるところがないと言われているんですね。

すりこぎ

昔から日本の食文化に欠かせない山椒

縄文時代の土器の中に山椒の実が見つかっていて山椒が利用されていた形跡があることから日本最古の香辛料と言われ、記録としては平安時代の書物に薬用や香辛料として利用されていた記述があるそうです。過去ブログでサケや干物も縄文時代から食べられていたと紹介しましたが、もしかすると魚の臭み消し等に山椒と合せて食べられていたのかもしれませんね。

ちなみに山椒と呼ばれるようになったのは江戸時代前半。それまではハジカミと呼ばれ当時から吸い口や佃煮等様々な料理に利用されていたようです。江戸時代後期の料理番付『日々徳用倹約料理角力取組(ひびとくようけんやくりょうりすもうとりくみ)』に載っている魚類方・前頭五 「まぐろ剥(すき)身」(鮪の剥き身の醬油煮)に山椒の葉があしらわれていました。

当時相撲番付のように“大関”を筆頭として東西に分け、順位をつけて優劣を競うという料理番付が庶民に受けて大隆盛だったそうです。確かテレビドラマにもなった人気の時代小説「みをつくし料理帖」(ハルキ文庫)にも主人公の料理が料理番付に載るという話がありました。

豆腐の田楽に山椒の葉が使われてた記録も残っています。京阪では山椒の葉を擦って白味噌に混ぜたものを塗り、江戸では赤味噌に山椒の葉をそのまま載せて焼いたそうです。東西文化の微妙な違いがあって面白いですね。

Copyright(C) 2016-2022日本食文化の醤油を知る

調べて見ると日本各地の郷土料理にもお魚と山椒の組み合わせた料理がありました。滋賀のこあゆの山椒煮、江戸時代から続く福島のにしんの山椒漬け等です。

ぐるりと海に囲まれ海の幸を頂いてきた日本。お魚の腐敗を防いだり臭みを取り除いたり、味付けに山椒を上手く活用する食文化が昔からずっと根付いていたのですね。

和歌山の“ぶどう山椒”に世界が注目

ちりめん山椒の他、味噌やポン酢等家庭で使いやすい調味料に加工された商品がたくさんあります。珍しいところでは山椒カレー山椒アイスなど。また海外でも和歌山のぶどう山椒が柑橘系の香りのある刺激的な実として高い評価を受けているそうです。

山椒の効果・効能 まとめ

・柑橘の爽やかな香り
・魚の臭み消し
・魚の腐敗防止(保存)

・殺菌
ピリッとした辛み
・味付け

小さな実がもたらす幅広い効果・効能に改めて驚きました。お魚とは切っても切れないいい相棒としてこれからも素材のコラボが楽しみです。

しらすを獲る漁師さん、山椒の生産者さん、お醤油屋さんに感謝です。早速何か頂きたくなりました。皆さまもぜひちりめん山椒をはじめ和歌山の山椒加工品を食べてみて下さいね。

魚のいい相棒!山椒(さんしょう)と水と電気

今回昔から山椒を利用する等魚の保存で苦労してきた日本の食文化に触れ、漁師さんが獲ったお魚を新鮮な状態で私たちが頂くことができるのは冷凍や冷蔵で保存されているおかげだと改めて実感しました。

水と電気のおかげで氷ができ、新鮮な海産物が市場に流通して私たちの食をはじめ毎日の生活が支えられていることに心から感謝です。




参考:
・「からだにおいしい野菜の便利帳」P189山椒 高橋書店 板木利隆監修
・『日々徳用倹約料理角力取組(ひびとくようけんやくりょうりすもうとりくみ)』に載っている魚類方・前頭五 「まぐろ剥(すき)身」
Copyright(C) 2016-2022日本食文化の醤油を知る 筆名:村岡 祥次
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/reference-17d.html
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豆腐の田楽に山椒(画像) Copyright(C) 2016-2022日本食文化の醤油を知る 筆名:村岡 祥次
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/reference-15b.html
・住友林業 きこりんの森 森の図書室 「森と歴史 山椒と日本人。」
https://kikorin.jp/contents/library/history/000181.html
・爽やかな香りとしびれる辛みが魅力の「山椒」の話。食材・料理2021.04.22
https://www.educe-shokuiku.jp/news/food/%E7%88%BD%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%AA%E9%A6%99%E3%82%8A%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%B3%E3%82%8C%E3%82%8B%E8%BE%9B%E3%81%BF%E3%81%8C%E9%AD%85%E5%8A%9B%E3%81%AE%E3%80%8C%E5%B1%B1%E6%A4%92%E3%80%8D%E3%81%AE/
・ぶどう山椒の歴史  
https://budo-sansho.com/about/history.html
※使用画像 しらす・しょうゆ   無料写真素材「花ざかりの森」https://forest17.com/